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2015年 09月 10日
先日、高松に行った。 高松はFの故郷で、小さい頃から何度も祖父や祖母に会いに行った懐かしい都市(まち)だ。 一泊して用を済ませ、飛行機の出発までにはまだ時間があったので、美術館で時間を潰すことにした。香川県立ミュージアムでやっている「この男がジブリを支えた。近藤喜文展」を観に行った。 以前も書いたが、私はけしてジブリのよいファンではない。細部のディテールにこだわり、アニメを実写に近づけようとするやり方にはむしろ批判的で、もし余白の時間がなければ、この展覧会もけして観には行かなかったろう。 だが観て、思いはガラリと変わった。 まず入ってすぐの、「ルパン三世」の峰不二子の洒脱なスケッチの線の美しさに参った。 此奴出来るな!と思った。それから俄然スイッチが入って観た。 どの絵も上手い。瞬時に必要不可欠の線で躊躇なく描かれている。しかもその範囲は多岐に渡り、一つ一つの量も膨大だ。アニメの展覧会だからと軽く考えていたのが間違いだった。これは心して観なければならないと覚悟した。 展示は彼が関わったジブリ以前の作品からほぼ時系列にそって並んでいる。
順番にあげると、「草原の子テングリ」「未来少年コナン」「赤毛のアン」「トム・ソーヤーの冒険」「名探偵ホームズ」「リトル・ニモ」「愛少女 ポリアンナ物語」「愛の若草物語」「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」「魔女の宅急便」「そらいろのたね」「耳をすませば」「紅の豚」「海がきこえる」「平成狸合戦ぽんぽこ」「もののけ姫」である。 錚々たる作品群である。 この間に、企画したが実現しなかったボード集が並ぶ。それらを観て行くと、ヒロインの女の子が意外とセクシーで肉感的だったりして、近藤喜文は実はもう少し大人寄りのアニメ、肉体的な表現も加味したアニメを目指していたのでは、とふと想像してしまう。でも、彼の絵には品がある。大人のアニメをつくったとしても、必ずほどよく抑制されたものになっただろう。 アニメの仕事の合間に喫茶店や路上で見かけた人々の丹念なスケッチも残しているが、日頃からこうした努力を怠らなかったと共に、その線からは誠実な人柄が伝わってくる。 私は長い間、「火垂るの墓」は本当はもっと凄いアニメになるはずだったのに、なぜあんなにおとなしいアニメなのだろう、と高い世評とは逆に疑問に思っていた。野坂昭如の原作の小説から受ける印象とはあまりに違っているからだ。 だが、展覧会を観て少し疑問が解けた。監督の高畑勳は反戦を声高に言うのではなく、空襲で焼け出された幼い二人の孤立していく過程をリアルに描くことで、現代の若者にも共感してもらい、考えてもらいたかったと語る。そして「日本人をちゃんと描こう」と作画監督の近藤喜文に求める。 こうした経緯があるからこそ、抑制されたリアリズムのアニメとなったのだろう。 こうした二人の取り組みは、「おもひでぽろぽろ」でさらに過激になる。 ごく普通の日本人をありのままに登場させようとし、主人公のタエ子の顔にほお骨の線やほうれい線を加え、27才の女の顔をきちんと描くことにこだわる。 そのため、彫刻家の佐藤忠良を尋ねて話を聞いたり、キャラクターのモデルとなった今井美樹のビデオを何度も止めて模写したり、残された近藤喜文の膨大なスケッチからは半端ではない意欲と葛藤が伝わってくる。 ・・・・・・・・・・・ いつのまにか閉館時間となり、最後の方は駆け足で観た。 カタログを買い、空港に向かう車中やロビー、飛行機の中でずっと読んだ。 翌日、「おもひでぽろぽろ」のDVDを借りて観た。 以前観た時はほとんど素通りしていた部分に妙に熱いものを感じた。 実写ならば名優が十秒で演じてしまうシーンを、その何万倍もの時間をかけてかけがえのないものをつくろうとする人達がいる。 ジブリは宮崎駿、高畑勳、鈴木敏夫だけのものではない。 こういう縁の下を支えてきた人がいるからこそ多くの名作は生まれたのだ。 近藤喜文。 永つまでもその名を憶えておこう。 かずま
by odyssey-of-iska2
| 2015-09-10 23:01
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