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2009年 06月 07日
![]() ロバート・アルトマンの作品で最初に観たのは「M★A★S★H」('70)だった。 朝鮮戦争時に韓国に駐留したアメリカ軍の移動野戦外科病院が舞台で、3人の軍医(エリオット・グールドが特に凄い!)が任務などそっちのけでハチャメチャをおこなう、当時のベトナム戦争に対する批判が色濃く反映されたブラック・コメディだ。 ヘリコプターでケガ人が運ばれてくる冒頭シーンとそのバックに流れる美しい挿入歌の落差に始まり、全編至る所に監督の才気が感じられる映画だった。 だが、それだけだったら、ロバート・アルトマンはただの上手な監督に過ぎない。 次に観た彼の映画はそれまで観たすべての映画と違っていた。 簡単に言えば、ストーリーが有るようで無いような、主人公がいるようでいないような、現実の様でそうでないような、そんな混沌とした不思議なつくりの映画だった。 それが「ナッシュビル」('75)だった。 おおまかなストーリーは有ることには有る。 或る大統領候補のキャンペーンのためにカントリー歌手や芸能人その他多くの人々がナッシュビルに集まり、それらのエネルギーが渦のように合わさって最後のコンサート会場場面で最高潮に達するが、そこで発砲事件が起こり、一瞬にしてすべてが壊れ去るという話だ。 だが、そのストーリーが重要なのではなく、むしろ破片のような些細な部分のエピソードがギクシャクしながら自然に合わさって巨大な渦を作って行く過程の方が凄かった。 さらに、ドキュメンタリーのように本人が同名の芸能人として登場し、現実と嘘が入り交じって、虚実皮膜の混沌はさらに深まって行く。 (ジュリー・クリスティーに対し、「あれがアカデミー賞をもらった俳優かよ?大した事ねえなー」というセリフには、さすがに当時のジュリー・クリスティー・ファンとしてはカチンと来たが・・・) ラストの、群衆が逃げまどう大階段の中を、空しさで一杯になりながら放心状態で去って行く選挙参謀の姿も秀抜だった。大統領の逮捕やベトナム戦争の敗北など、当時のアメリカが置かれていた絶望的な状況と空気が見事に捉えられていた。 こういう、登場人物がたくさん出て来て、主人公が複数の映画のつくり方を「グランド・ホテル形式」と呼ぶ人がいるが、アルトマンの映画はそれとはまったく違っている。 「グランド・ホテル」('32)は確かにグレタ・ガルボを始め多くの有名な俳優が出て来て、複数のエピソードでできているが、一つ一つは小さくきれいにまとまっていて、それほど複雑なつくりではない。 「ナッシュビル」は一つ一つは破片のようでまとまりがなく、偶然のアドリブの連続ように見えるのだが、それらが集まりダイナミックに合わさって行く様は、Jazzのライブを観ているようだ。 この映画によってアルトマンは初めて自分のスタイルを確立した。 そしてそれを初めて観てショックを受けた大学生の私は、映画館を出てしばらくの間、あの大階段を去って行った選挙参謀のように放心状態のまま高田馬場の街を歩いた・・・ かずま
by odyssey-of-iska2
| 2009-06-07 21:34
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