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2011年 05月 15日
「最近の日本映画はどれもダメだ、ファーストフードか気の抜けたビールみたいで」 と悪態をついていたら、この映画に出会った。 私はつむじ曲がりなので、流行の映画と流行の小説は観ないし読まないのが常なのだが、この映画はひょんなことから観てしまった。そして俄然、小説も読んでしまった。 どちらもよかった。特に映画はよかった。ここ数年観た映画の中で一番心に残った。 観始めてすぐに気づくのは、この映画がとても丁寧に作られているということだ。 カメラのアングルや流し、カット割り、音入れ、構成が明らかにTVとは違う。TVもどきの映画や気の抜けたビールとも違う。久しぶりに観る映画らしい映画でうれしくなる。 そのうちタイトルの「悪人」とは逆のことを描こうとしていることが自然と分かってくる。(私は最近よくある、悪やバイオレンスを徹底的に描いたと言いながら、その実、何も描けていない底の浅い映画が嫌いだ。その突き抜けた先に何があるのかを知らしめてくれるのが本当の映画だろう、と言いたくなる) 「丁寧に作られている」と感じるのは技術的なことだけではなく、一つ一つの描写もそうだからだ。 主人公の祐一や彼に殺される佳乃、途中まで犯人と思われていた圭吾、祐一と逃避行する光代、の主要人物だけでなく、祐一の祖父母や別れた母、佳乃の両親、圭吾の友達、光代の妹など、周囲の人々の日常や心情も丁寧に描写されている。そうすることで、新聞やメディアで「殺人事件」と一括りにされ、犯人=悪人と簡単に切り捨てられる報道の裏には、多くの真実とそれに至る個々の必然があり、(一つの彫刻を光にかざして見た時のように)それは見方によっては善(光)であったり悪(影)であったりするが、本当は一体の物で、簡単に白黒がつけられるものではない、とするこの映画の主張へ自然と導いてくれる。 しかもそれらの描写が映画を散漫とさせるのではなく厚みにつながっている。 こうした丁寧な描き方の積み重ねがあるからこそ、最後の灯台で二人が引き裂かれるシーンや、夕陽を望む回想シーンに限りない共感を覚えることができるのだ。 映画の勝利の瞬間だ。 妻夫木聡(祐一)は今まで観た中で一番良かった。が、主人公が彼で無かったとしても、それはそれで別の映画ができただろう。 だが、光代はどうしても深津絵里でなければならない。 そう思わせる程、深津絵里の演技は凄かった。 繊細で、震えるような心がひたひたと伝わって来た。 そして最後に、彼女の口から独り言のように言葉が発せられる。 そうですよね 世間で言われよる通りなんですよね あの人は悪人なんですよね 人を殺したとですもんね こんなに反語として響く言葉を聴いたのは初めてだった。 私は長崎で生まれ、小2の時に東京に来て、以来東京で育ったので、九州弁は少しも話せない。だが、この映画や小説に出て来る言葉のイントネーションやリズムは妙に懐かしかった。舞台となった長崎郊外の街や佐賀、博多の街も(正確には知らないのに、)妙に昔見たことがあるような錯覚を覚えた。 最後に出て来る灯台は、五島列島の先端にある大瀬崎灯台だ。 今度、長崎に行った時にはぜひ立ち寄り、祐一や光代と再会したい。 かずま
by odyssey-of-iska2
| 2011-05-15 20:07
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