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2011年 10月 21日
![]() 気骨のある女の最右翼と言えば、やはりマレーネ・ディートリッヒだろう。 あのヒットラーを振ったのだから。 ディートリッヒに初めて出会ったのは「モロッコ」だった。 古い映画なのに、観てびっくりした。カッコよかった。そして気品があった。 その後もこんなに気品のある映画とはあまり出会っていない。 この映画の気品はすべてディートリッヒから出ている。 彼女の最初の登場シーンからしてそうだ。 モロッコの港に着く船に乗り合わせた金持ちの男から好意を持たれ、名刺を渡される。 が、破ってふっと吹き捨てる。 何者にも束縛されないわ、という女の気概が伝わって来てカッコイイ。 次に、あの有名な酒場の舞台での登場シーンだ。 男装のシルクハットでゆっくり現れ、騒ぐ客席をよそに椅子に半身に腰掛け、ゆっくり煙草を吸い始める。そしておもむろに歩き始め、歌い出す。客の求めに応じてシャンパンを飲み干し、女の花飾りを抜き取ってキスし、その花をおもむろに客席の兵士に投げて喝采の中去る。 このシーンのカッコ良さは誰も真似ることができない。ディートリッヒだけの気品だ。 それは「間諜X27」('31)、「上海特急」('32)でも同様だ。 特に「間諜X27」(間諜とはスパイのこと)のラストシーンは凄い。 処刑場に向かう時でも兵士の剣に映る姿で髪型を直し、銃殺用の目隠しを勧める若い将校の申し出を断り、反対に彼の瞳に浮かぶ涙をやさしくそれで拭ってやり、最後には微笑みさえ浮かべて死ぬのだ。 真にディートリッヒだ。 ヒットラーはディートリッヒがお気に入りで、ドイツに戻るよう要請する(腹心のゲッベルスはさらに熱心で、彼がパリまで出かけて交渉した)が、彼女はそれを断り、逆にアメリカの市民権を得てヨーロッパ戦線での慰問活動を積極的におこない、反ナチスを鮮明にしていく。 映画だけでなく、好きでない奴らには平気で肘鉄を食らわす、実に毅然として爽快な女だ。 だがこの結果、生まれ故郷のドイツとは深い亀裂を生むことになる。(連合軍の爆撃するベルリンには愛する母親がいた。母親もヒットラーとナチスを嫌ったが、ドイツに居続けることを選んた。この時ディートリッヒの精神状態はいかばかりだったろう) この辺りのことは彼女の孫のデイヴィッド・ライヴァがまとめたドキュメンタリー映画「真実のマレーネ・ディートリッヒ」(原題は「Her own song」 2001)に詳しい。 この映画で興味深いのは、ジャン・ギャバンとの関係だ。 ナチスの侵略で自由を奪われアメリカへ逃げて来た人を癒すため、ディートリッヒは自宅を開放し手厚くもてなした。その輪の中にギャバンもいた。 やがて二人は恋仲になる。だが、ギャバンはディートリッヒの反対を押し切り、自由フランス軍に志願し戦地へ向かう。 ディートリッヒが危険を顧みず、他のスターの誰よりも戦地での慰問活動に熱心だったのは、実はギャバンを追いかけ、自分もギャバンと共に戦っていると肌身で感じたかったからだろう。 戦車隊長のギャバンと再会するシーンはこのドキュメンタリーの白眉だ。それは外人部隊の兵士の恋人を求め、砂丘を裸足で追いかける「モロッコ」のラストシーンと重なる。 氷のような顔をしているが、心はとても熱い女だ。 思えば、マレーネ・ディートリッヒくらい、自分の人生と戦争が分ち難く関係している人間はいないだろう。 彼女のデビュー自体、父親と義父が第一次大戦中に亡くなり、家族を養う必要があったからだ。 その関係は第二次大戦後も続く。 戦後16年経ってディートリッヒは初めてドイツで歌手として公演をおこなうが、人々の反応は複雑で、マスコミは彼女をひどく冷遇する。そのため、以後も世界各地で巡業をおこなうが、ドイツではとうとう死ぬまでおこなわなかった。 結局、彼女がドイツに温かく迎えられるのは、パリで亡くなり、遺体がベルリンの母親の墓の横に葬られた1992年だ。今では彼女の名前を冠した広場がベルリンにある。 今の若い人にとってマレーネ・ディートリッヒは「恐いおばさん」くらいにしか感じないかもしれない。 だが私は、1920〜30年代に栄えたアール・デコの美意識をたたえながら、現代に通じる普遍的な愛と誇りを(実人生も含めて)立派に表現した凄い女優だと思う。 なんてったって、あの気品は誰も真似ができないくらいカッコイイ。 かずま ![]()
by odyssey-of-iska2
| 2011-10-21 23:05
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