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2011年 11月 07日
昨日、TVで「悪人」をやっていたので再び観たら、新たな発見をした。 雨がとても効果的に使われていると思った。 たとえば、祐一と逃避行することになる光代が最初に登場するシーン。 冷たい雨の中、仕事場から自転車を漕いで家に帰るとドアにチェーンが掛けられ入れない。声を掛けやっと入れるが、中で男といちゃついてた妹は二人で食事に出てしまう。 濡れた髪を拭きながら1人侘しい食事をする光代。 潤いの無い冷えた日常を雨が増幅している。 光代に殺人を告白した後、祐一が警察に自首しようとする雨のシーンも効果的だ。 土砂降りの中、車のドアを開け、濡れながら署に向かう祐一。 泣きながらそれをじっと見つめ、最後にクラクションを鳴らして止める光代。 激しく打ち付ける雨の音だけなのに、二人の心の声が聞こえてくる。 殺された佳乃の父が佳乃の亡霊と出会う、殺人現場の峠の雨のシーンも印象的だ。 父は娘に「お前は悪とうなか」と何度もつぶやき、頭を撫で、抱きすくめようとするが、その瞬間、傘が手元から落ち、娘は消えてしまう。 明るい天気雨のような光景が幻想的で、父の悲哀を余計浮き彫りにしている。 色も注意深く使われている。 雨や曇り、そして夜のシーンが多いので、全体のトーンは黒や灰色がかっているのだが、その中で祐一と光代の着ている洋服の鮮やかな赤や青の色は目立ち、世間から浮き上がってしまった二人の状況が端的に示されている。 晴れた空はほとんど出て来ない。それはラストの二人で夕陽を眺める回想シーンのために取っておいたのだろう。夕陽に染まった二人の顔は観終わった後も強く記憶に残る。 妻夫木聡(祐一)の演技で印象深いシーンに、初めてのデートで光代と別れた後に車のハンドルに何度も激しく頭を打ち付けるシーンがある。 最初に観た時はこの動作が唐突に感じられ、よく理解できなかったのだが、今回、灯台で光代を待ちわび(この時、光代が寝ていた空色の毛布をやさしく抱きしめるシーンはとても切ない)、光代の姿を見つけると窓ガラスに激しく頭を打ち付ける同じ動作を見て、よくわかった。 後悔や喜びの念で感情が爆発すると、理性ではコントロールできないくらい身体が直情的に反応してしまうのだ。この演技があるからこそ、佳乃の嘘に我慢できずに夢中で殺めてしまったことがスムーズに理解できる。 「あの女を殺したことを最初は悪こうこととは思わんかった。 けど、光代といると苦しゅうて、苦しゅうて・・・」 後悔に泣き叫ぶ祐一の言葉は悲痛だ。 私は観ながら同じように罪悪感を感じ、その果てにカタルシスを得た。 きちんと作られた映画は何度見ても新しい発見があり、見飽きることがない。 建築と同じだ。 かずま
by odyssey-of-iska2
| 2011-11-07 20:02
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