お気に入りブログ
検索
以前の記事
2022年 11月 2022年 06月 2021年 10月 2021年 01月 2020年 08月 2020年 05月 2020年 03月 2019年 11月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 01月 2018年 10月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 05月 2013年 03月 2013年 01月 2012年 10月 2012年 08月 2012年 06月 2012年 02月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 08月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 03月 2011年 02月 2010年 12月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 05月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 09月 2009年 06月 2009年 03月 2009年 02月 その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2012年 10月 24日
![]() 昔、夜遅く帰宅してTVの深夜映画を何とはなしに見ていたら、いつの間にか見入ってしまい、記憶に残った映画がある。(だが、その題名は忘れてしまった) それを思い出し、急に書こうと思ったのは、高林陽一が亡くなったという記事を読んで、何とはなしに調べていたら、その映画が「西陣心中」だとわかったからだ。 帰宅の途中で渋谷のTUTAYAに寄り、ビデオを借りて観たら、やはり良かった。 私はこうした、はかない、滅びの美学のある映画が好きだ。 記憶の中では、ラストシーンは高いビルから男女が飛び降り、(男は死んだままだが)女はスローモーションのように幽体離脱して立上がる所で終わる。だが、再見すると、女はそのままゆっくり起き上がり、まるで生き返ったかのような感じで終わっている。 これは幻想だろうか。それとも監督や観客の秘めた願望だろうか。 いずれにせよ強い印象を残すラストシーンで、私は何度もヴィデオを巻き戻しながら見た。 初めて見た時は主人公のゆみが坂道をころげ落ちるように悲劇に向かって進む様が強く印象に残っているが、再見するとかなり通俗的な内容で、同じ頃に高林陽一がATGに残した「本陣殺人事件」('75)や「金閣寺」('76)とは趣が異なっている。(この2つも同時に借りて見た。前者は市川崑の横溝正史物の先陣を切ったような作品で、おどろおどろしさの中に耽美的な美しさがあり、高林陽一らしさがよく出ている。後者はATGを意識し過ぎたのか少し芸術的過ぎて、私にはピンと来ない) それに比べるとストーリーはわかり易く、一歩誤ると俗なだけの映画で終わりそうだが、ギリギリの所で踏みとどまり、逆にそこから不思議な光を放っている。 この映画は簡単に言えば、魔性の女を描いた映画だ。 そしてその魔性はすべて主人公のゆみを演じた島村佳江から発せられている。 この時、この瞬間にしか発せられない魔性で、「ベティ・ブルー」のベアトリス・ダルの場合と同じだ。 この魔性に監督まで魅入られたのか、主人公を描くことに一生懸命なあまり、映画は膨らみに欠け、痩せている。 だが、そうまでしても高林陽一はやはり魔性を描き切りたかったのだろう。 このバランスの欠けた感覚、何かに取り憑かれて一線を越えてしまう感覚がもしかしたら高林陽一の魅力かもしれない。 万人向きの映画におもしろいものはない。 誰かが偏愛してくれるからこそ、それをエネルギーに変えて映画は撮れるのだと思う。 私は観ていないが、高林陽一は8mmや16mmの世界では国際的にも知られた、日本の自主映画の走りの監督なのだという。それから通常の映画を撮るようになったのだが、だから通常の映画畑で育った監督とは違う不思議な魅力を持っているのだろう。 この辺はカサヴェテスと似ている。 彼は西陣で生まれ育った。ある意味ではこの映画は自分のルーツを素材にして撮った商業的な自主映画と言えるかもしれない。西陣への愛と郷愁が、はかない、滅びの美学へ自然とつながっていったのだろう。 京都好きの私には忘れられない映画だ。 かずま ![]()
by odyssey-of-iska2
| 2012-10-24 19:06
|
ファン申請 |
||