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2014年 04月 09日
![]() 私は戦争映画は嫌いなのでほとんど観ないのだが、この映画は観た。 そして(完璧に理解できたわけではないが)惹かれるものを感じた。 それから20年以上経って未公開シーンを加えたディレクターズ・カット版が2001年に上映された。(これにより2時間半の大作が、3時間半の超大作となった) 戦争の狂気を描く意図は明快になったし、多くの謎も解けた。だが、依然として大きな暗闇のような、監督の思惑をも飲み込んだブラックホールのようなものを私はこの映画に感じている。 その大きな理由は、映画の後半に出てくる、ジャングルの奥地に突如つくられた(アメリカ軍の力の及ばない)独立王国の存在と、その王国の主であるカーツ大佐の存在だ。(マーロン・ブランドが例によって不気味で不可解な演技を繰り広げ、そうしたイメージをさらに増幅している) 映画の前半でもアメリカのベトナム戦争の無意味さと狂気の沙汰が延々と描かれ、戦場がノーコントロール状態であることが示されるが、後半はさらにノーコントロール状態な感じで、最終的にどういう結末が下され、それをどう解釈するかはすべては観客に委ねられている、という感さえある。 「ゴッドファーザー」でマフィアの冷徹さと血の団結を壮大な叙事詩に描くため、明快で計算され尽くしたつくり方をしたコッポラが、ここではむしろ判断を先延ばしし、流れに身を任せながら戦争や人間の闇そのものに何かを語らせようとした感じだ。 私はこのこと自体を悪いとは思っていない。むしろ戦争や人間の闇の大きさ、不可解さがよく表れていて、勝手に紋切り型の陳腐な結論をつけるよりずっと良かったと思っている。 原作は1899年に発表されたジョゼフ・コンラッドの「闇の奥」(Heart of Darkness)で、舞台をアフリカのコンゴからアジアのベトナムに移し、ストーリーの骨組みは残しながらも多くは換骨奪胎され、20世紀後半の不条理なベトナム戦争の物語に変わっている。 また、T・S・エリオットの詩や他の文学作品からの引用、隠喩が多くの場面にちりばめられている(らしい。この辺のことは西洋人ではない私にはよくわからない) だが、そんなことはどうでもいいことだ。 映画にとってそれが効果的なのかそうでないのかだけが問題だ。 結論から言えば、それは十分成功していて、戦争の無意味さや焦燥感、苦悩がよく表れている。また、当時のアメリカ社会の厭戦気分さえ伝わってくる。 結果的にカーツ大佐は殺され、王殺しの物語は完結する。 そして大佐の遺言により王国はナパーム弾で焼き払われ、燃え盛るジャングルと共に消えて行く。 エンドロールではこの燃え盛るシーンが、右から左へ、下から上へ、あるいはその逆へ、これでもかこれでもかとスローで延々と続く。 それはとても美しい魔力を秘めた映像で、ドアーズの演奏と共にこの映画のエンドにピッタリだった。(ストラーロはLSDをやりながら撮ったのだろうかと思った) 私は長い間このエンドロールの映像が好きで、2001年のディレクターズ・カット版も観に行った。ところがその部分はただの黒いバックと白文字に変わっていた。 ショックだった。 なんなんだ?!これは!! と思った。 コッポラは、最初の版は自分の意図したものではなく、再編集する際に変えたと釈明しているが、要するに世評を気にしてひよったのだ。 これを観て、戦争を賛美していると取る者などいない。 それより、暗い深淵な人間の闇を表すのにこれほどの映像は他にあるだろうか。 またしてもこの映画は監督をも飲み込んだブラックホールのような存在だと感じた。 他にも「ディア・ハンター」('78)や「プラトーン」('86)など、この時代のベトナム戦争を扱った映画には秀作が多い。そのどれもが、異なる視点から戦争と人間に肉薄している。 何度でも観てみたい。 かずま ![]()
by odyssey-of-iska2
| 2014-04-09 14:37
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