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2014年 05月 17日
飛行機から美しい小さな島を見つけると、いつも思い出す映画がある。 そして、リザとジョルジョは今でもそこに住んでいるのでは、と思ってしまう。 人は誰でも自分だけにしか通じない物語をいくつか持っている。 「ひきしお」は私にとってそんな映画の一つだ。 この映画は渋谷の名画座で、2本立てで観た。(もう1本の方が本当は観たかったのだが、それが何なのか今は思い出せない) 観終わった後とても不思議な感じがした。ストーリーはこんな風だ。 ある小さな島に恋人と喧嘩してヨットから飛降りた美しい女リザ(カトリーヌ・ドヌーブ)がやって来る。そして、その島で都会の生活に嫌気がさし、犬のメランポと自由気ままに暮らすジョルジョ(マルチェロ・マストロヤンニ)と出会う。やがてリザはメランポに嫉妬し、海に連れ出し溺れさす。そして首輪を自分の首に巻き、犬のように振る舞う。 (ここでジョルジョが語る、18世紀ドイツの、美しい牝犬と交わったために共に火あぶりの刑に処せられる高僧の物語は暗示的だ) 妻の自殺未遂のため一旦ジョルジョは都会に戻るが、冷えきった関係は元には戻らず、そこにリザも現れ、再び二人は島へ戻る。 だが、嵐でモーターボートは流され、島中の植物も長雨と湿気で枯れ、食料は尽きてしまう。最後の手段で島に置き捨てられていたボロボロの飛行機を修理し脱出を試みる。 盛装して乗り込む二人。ゆるゆると動き出す飛行機。だが、飛び立つことは無く、ただゆるゆると動くだけで‥‥ 空から俯瞰された島がゆっくりOUTして行き、それにFINの文字が被る。 十代の終わりの多感な時期にこの映画を観たので、いろんなことを感じた。 誤解を恐れず言えば、それは明るいデカダンスへの憧れのようなものだ。 甘い背徳や退廃の匂いがして、秘かに心地よかった。(ステファン・グラッペリのアンニュイなバイオリンの音色と、海辺の明るい日差しがそう思わせたのかもしれない) また、どことなくシュールで、耽美的な色彩にも惹かれた。 映画を観た、というより、文学作品を一冊読んだような感じだった。 もちろん読後感は悪くはなく、心象風景の一つとして私の中にその後も残った。 その後、ヴィスコンティの一連の映画を観てデカダンスへの理解は大幅にアップしたが、私自身はそれほど暗い人間ではないので、やはり明るいデカダンスの方に強く惹かれる。 この映画にはどこかブニュエル的なものを感じる。 何かの寓意性を持ちながら、簡単な意味付けは拒否している。そういう所もおもしろい。 ドヌーブはたぶんこの映画が一番きれいではないかと思う。 それまでドヌーブは、美人だけどどこかキツかったり冷たかったりで、好きになれなかったが、この映画のドヌーブは恋する女そのもので、とても温かくきれいだ。 マストロヤンニもそれまでのフェリーニ映画とは一転して、髭面で、寡黙で、男らしい。 (本当にマストロヤンニなんだろうかと途中まで思った) 二人はその後同棲し、娘を設ける。 リザとジョルジョはやはり生き延びたのだ。 そんなことを知らなくとも、スーッと夢の世界へ入って行ける。 私にとって「ひきしお」はそんな映画だ。 かずま
by odyssey-of-iska2
| 2014-05-17 19:39
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