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2014年 06月 14日
年月と共にその良さを増して来る映画というのがある。 若い頃に観た時もいい映画だなとは思ったが、経験が伴っていなかった。 その後いろんなことがあって、いろんなことがわかるようになった。 観る度に深さを増し、愛着を感じるようになった。 「追憶」はまさにそういう映画だ。 原題は「The way we were」 なかなか味わい深いタイトルだ。 私達、つまりケイティ(バーブラ・ストライサンド)とハベル(ロバート・レッドフォード)の出会いから別れ、そしてつかの間の再会までの20年間を描いた映画で、時代は第二次世界大戦の始まる直前の1937年の大学時代から、大戦中のニューヨーク、戦後のマッカーシズム吹き荒れるハリウッド、そして50年代のニューヨーク、とアメリカ現代史と深く関わっている。激動する歴史の中で個人が(二人が)いかに生きていったかが丁寧にしっとりと描かれている。 二人の恋愛と歴史の進行とが上手に絡まりながら、最終的にはすべてを納得させられ、しみじみとした気持ちにさせられる。 脚本がとても上手だ。 そしてその脚本に生き生きとした生命を吹き込み、共感と愛惜を生み出す繊細な演技をした二人の俳優がとてもいい。 特にバーブラは、堅物で融通が利かなくて不器用な共産主義者の、それでいてとてもかわいい女を好演してて、観る度に知らず知らず引き込まれてしまう。 こんな女がいたら嫌だなと思う反面、そのひた向きさに惚れてしまうかもしれない。 つまりハベルになってしまうかもしれない、と観ていてスーッと思わせる。 レッドフォードも上流階級の品の良い、すべてに恵まれた、だが政治活動にはまったく興味の無い美青年を好演してて、私が女だったらたぶん惚れてしまうだろう。 二人は互いに違いを感じながらも接近し、その度にハベルは越え難い壁を感じて逡巡するが、ケイティの情熱が勝り、やがて結婚する。そして、上手く行くかに見えた時、ハリウッドにマッカーシズムの嵐が吹き荒れ、二人の考えの違いはどうしようもなくなる。 これは映画人達が自分達の負った過去の負の遺産を赤裸々に語った最初の映画だ。 そしてこれも「The way we were」なのだ。 二人が追手から逃れてある一室に逃げ込み、そこで繰り広げられる会話が忘れられない。 ハベルはもう終わりだと言う。 だが、ケイティはまだやり直せる、私は変わるわと言う。 その度にプーッと大きく息を吐き、身をくねらせながら自重気味に答えるハベル。 二人の乖離が決定的になるシーンだが、観ていてとても切ない。 二人の気持ちはわかり、どちらにも加担したいのだが、答えは明らかだ。 涙が出た。 幾年かが経ち、ニューヨークの路上でケイティが原爆禁止の署名活動をしている最中、二人は偶然出会う。 この時二人が交わす会話と目の演技はこの映画の白眉だ。 そして流れるバーブラの絶品の主題歌。 また涙が出た。 シドニー・ポラックという監督は名人芸というか職人だなと思う。 すべてのシーンを過不足無く仕上げ、ストーリーを積み重ねていって、観客をたっぷり酔わせながら、けして出しゃばらない。 観終わって俳優とストーリーとシーンだけがスーッと印象に残る。 その印象深いシーンに、後半で夕暮れ時に斜め上空からヨットを俯瞰するシーンがある。 その時、男友達とハベルの交わす会話がいい。 「最高のウイスキーは?」 「I.W.ハーパー!」 「最高の年は?」 「1944年、いや45年、46年・・・」 悔恨に満ちたほろ苦い会話だ。 だが、TVで放送された時、前半分は消えていた。 だから私はこの映画を観ると、いつもハーパーが飲みたくなる。 バーブラ・ストライサンドは、歌手、ミュージカル女優、映画女優、作曲家、プロデューサー、映画監督、とすべてのショービジネスの世界で成功した凄い才能の持ち主だが、フェミニストや政治的発言でも有名で、ケイティのその後を見るかのようだ。 ロバート・レッドフォードも映画俳優だけでなく、優れた映画監督、プロデューサーとして有名で、若手の映画人を育成するためにサンダンス・インスティテュートを設立し、インディペンデント映画を支援するサンダンス映画祭を主宰している。ハベルも負けてはいない。 私が「追憶」を愛するのは、単なるラブストーリーを越えて、こうした骨太の映画人達の思いが、とりわけマッカーシズムの時代への悔恨と愛惜がそこに深く込められているからだろう。 かずま
by odyssey-of-iska2
| 2014-06-14 23:32
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