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2014年 09月 30日
この映画を最初に観たのはたぶん小学生の頃で、NHKの名作劇場か何かだったと思う。 よくわからなかったが、スリリングでカッコ良かったことだけはよく憶えている。 今から思えば、最初に聴いたJazzはこの「死刑台のエレベーター」だった。 大学に入ってアメリカン・ニューシネマを片っ端から観ていた頃、それがフランスのヌーヴェルヴァーグから影響受けていることを知り、ヌーヴェルヴァーグの映画も観るようになった。 だが、ルイ・マルの作品はゴダールやトリュフォーなど他の作家達とはまるで違っていた。 一言で言えば、最初から完成度の高い完璧な映画だった。 それを一番簡単にわからせてくれるのがこの「死刑台のエレベーター」だ。 この映画を完成させた時、ルイ・マルはまだ25才だった。早熟の天才としか言いようがない。 ストーリーは意外と単純で、ある不倫関係にある男が女の亭主を自殺に見せかけ殺す。(ここまではよくある話だが、)現場に残した証拠隠滅に戻ろうとして男はエレベーターに閉じ込められてしまう。それと同時に、路上に停めていた彼の車は別の若い男女に奪われ、彼らが別の殺人を犯すことで完全犯罪は壊れ、水の泡と帰す。 始まりの、電話で女と男が呟くように会話するアップからして秀抜だ。観ている我々も共犯者に巻き込まれてしまう。 そして突然エレベーターに閉じ込められ、不条理な世界に投げ込まれるシーン。観ていて息苦しさと同時にどうしたら脱出できるかドキドキして来る。 そうとは知らないフロランス(ジャンヌ・モロー)はジュリアン(モーリス・ロネ)を探して夜の街を彷徨する。このシーンのジャンヌ・モローの空虚感漂う美しさは絶品だ。都会の孤独感さえ感じられる。この時、ジャンヌ・モローは29才だがその存在感は絶大で、すでに大女優の風格さえ漂っている。 フロランスは車を奪ったのが花屋の若い娘とその恋人のチンピラであることを突き止め、証拠隠滅のためカメラの現像所に向かうチンピラの後を追いかける。そこで先回りしていた刑事(リノ・バンチェラがいい味を出している)に意外な証拠を見せられ、共犯者であることが割れてしまう。そして再び彼女の呟くような述懐で映画は終わる。 最初から最後までクールなタッチの映像がテンポ良く続き、しかも雰囲気があり、飽きさせない。だが、もし全編を流れるマイルスの不安げなトランペットの音が無ければ、その魅力は半減していただろう。 マイルスはルイ・マルから完成前のラッシュフィルムを見せられ、即興で吹いたと言われるが、(車を奪った若い男女がパリの街を疾走するシーンは多分そうだろう)多くの部分はスタジオできちんと録音され、後にアルバムとなっている。 この前後からフランス映画にジャズはよく使われるようになり、「シネジャズ」という言葉が生まれる。ロジェ・ヴァディムの「大運河」(’57 音楽はMJQ)や「危険な関係」(’59 作曲はデューク・ジョーダン、演奏はジャズ・メッセンジャーズ)、エドゥアール・モリナロの「殺られる」(’59 音楽はジャズ・メッセンジャーズ)などだ。 ルイ・マルもジャズ好きで、この映画の他にも「好奇心」(’71)でチャーリー・パーカー、「ルシアンの青春」(’74)でジャンゴ・ラインハルトの演奏を使っている。特に後者のギターは効果的で印象深い。 ルイ・マルは裕福な家庭で育ったせいか、たとえ実験的な作品をつくってもどこか品が良く、映画として破綻していない。そういう点は他のヌーヴェルヴァーグの作家達、特にカイエ・デュ・シネマ派とは違う。 また、晩年になればなるほど繊細で豊かな、人生の機微を感じさせる映画をつくった。 その中では自伝的な要素の濃い「さよなら子供たち」(’87)が好きだ。 (あらゆるジャンルに言えることだが、)デビュー作で凄い作品をつくったが為にそれを越えられず終わってしまう作家は多い。 だが、ルイ・マルはそれを易々と越えていった。 やはり天才だな思う。 かずま
by odyssey-of-iska2
| 2014-09-30 23:18
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