お気に入りブログ
検索
以前の記事
2023年 08月 2022年 11月 2022年 06月 2021年 10月 2021年 01月 2020年 08月 2020年 05月 2020年 03月 2019年 11月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 01月 2018年 10月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 05月 2013年 03月 2013年 01月 2012年 10月 2012年 08月 2012年 06月 2012年 02月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 08月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 03月 2011年 02月 2010年 12月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 05月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 09月 2009年 06月 2009年 03月 2009年 02月 その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2015年 03月 05日
![]() これまでで一番多く観た映画俳優は誰かを以前調べたことがある。 てっきりデ・ニーロだとばかり思っていたら、ジャック・ニコルソンの方が一つ多かった。 ジャック・ニコルソンは「イージー・ライダー」('69)以来アメリカン・ニューシネマの常連で、(私はニューシネマを多く観たから)当然と言えば当然なのだが、別にニコルソンが好きで観ていたわけではないので、少し意外な気がした。 (あのアクの強い演技と怖い目、嫌な性格から、むしろ嫌いだった) だが、一つだけムチャクチャに彼を好きになった作品がある。「カッコーの巣の上で」('75)だ。 誰とも違うニコルソンの、けして群れず、何者にも迎合しない魅力が全開している。 そしてニューシネマのヒーローの決定版を創り出している。 物語はある精神病院に一人の男が送り込まれて来る所から始まる。 彼の名はマクマーフィ(ニコルソン)。刑務所での労働が嫌で、働かずに刑期を終えるために精神異常の振りをしているだけなのだが、病院内のスポイルされた患者達の姿を見て驚く。元凶は病院を支配するラチェッド婦長。(演じるルイーズ・フレッチャーが見事な敵役で最高だ) マクマーフィの反抗心がムラムラと燃え上がり、二人はことあるごとに衝突する。 中でも私の一番好きなシーンは、管理主義者のラチェッドのために観れなくなったワールドシリーズを、映ってもいないのにTVの前でマクマーフィが熱く架空実況中継し始めるシーンだ。その興奮ぶりに仲間達もおずおず出て来て一緒に興奮し、はしゃぐ。 想像力が自由の束縛に打ち勝つ瞬間だ。観ていてとても清々しい気持ちになる。 病院のバスを乗っ取り、仲間達を乗せて港から船に乗り、沖で釣りをするシーンも爽快だ。そしてこの時の全員のはしゃぎぶりも凄い。 だが、こうした行為でラチェッドはマクマーフィを病院から無期限に出られないようにする。そしてタバコのいざこざでの反抗を理由に彼に電気ショック療法を施す。マクマーフィもそこから脱出する決意をする。 この時、それまでずっと聾唖者を装って世間との関わりを絶ってきたインディアンのチーフ(図体はデカいが目はきれいだ)が、マクマーフィにだけその秘密をばらすシーンは印象的だ。彼の出現は患者達の心に化学変化をもたらし、皆は覚醒していく。 脱出の夜、マクマーフィは仲間達を集めて乱痴気騒ぎを催す。 (そのままズラカってればすべては成功で、マクマーフィも自由を得るはずだった!) だが、可愛がってたビリー(ブラッド・ドゥーリフの繊細な演技は心に残る)が女友達のキャンディを好きなのを知り、二人を遂げさせる。 酒に酔って寝てしまった一行は翌朝、ラチェッドらに見つかり、厳しい叱責を浴びる。そのため傷ついたビリーは自殺する。マクマーフィはとうとう爆発してラチェッドの首を締め、殺そうとするが、失敗する。 ラストはとても心に残る。 夜間、戻って来たその哀れな姿を見て驚き、そっと抱きしめるチーフ。 そして彼の意志を受け継ぎ、 「こんな姿のまま残しては行かない。一緒に行こう。行くぞ!」 と言って、廃人のマクマーフィを枕で窒息させ、かつてマクマーフィが持ち上げられなかった重い水飲み台を持ち上げて窓をぶち割り、脱出に成功する。 この映画はいろんな解釈ができる。 精神病院は社会の縮図で、そこに暮らす人々は我々に過ぎないとか、反体制派は体制派に勝つのではなく、たまたま運のいい奴だけがそのおこぼれにあずかるだけだとか、結局、体制に順応して上手にガス抜きしながら生きた方が得だとか、人それぞれだ。 だが、若かった私はこの映画から決定的な影響を受けた。 それは自由への希求だ。 自分を束縛するものとは徹底して戦う、そして生涯それを続けよう、そう思った。 監督のミロス・フォアマンはユダヤ系チェコ人で、幼い頃、両親をナチスに殺された。 チェコで若き才能ある監督として認められた頃この作品の映画化を持ちかけられたが、当局の監視下にあり実現しなかった。その後、チェコ事件でアメリカ亡命を余儀なくされ、幾多の試練を経た後やっと実現した。話があってから13年後のことだ。 この作品には彼のそうした人生も深く投影している。 マクマーフィは死んだが、彼の意志は今も生き続けている。 かずま
by odyssey-of-iska2
| 2015-03-05 19:46
|
ファン申請 |
||