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2015年 06月 30日
![]() 私は黒沢が監督した全30作中14作品しか観ていない。 なので、黒沢を語るにはふさわしくないし、語りたいとも思わない。既に多くの人が語っているし、その焼き鈍しを一つ増やす程の暇人でもない。そう思っていた。 だが、もし語れるとしたら、それは「羅生門」('50)しかないと思っていた。 ある時、ニュースで「羅生門」がデジタル復元技術で完全修復されるという話を聞いた。その出来は凄いらしいとのことで、とても興味を持った。それをひょんなことから手に入れ観た。確かに画像、音声共すばらしかった。 学生時代に池袋の文芸座の黒沢週間に通い詰めして立て続けに観た頃を思い出した。 この映画は今観てもアブストラクトでモダンだ。 黒澤の他の映画が、例えば、血湧き肉躍る「七人の侍」('54)やユーモアが絶品な「椿三十郎」('62)、ヒューマニズムが強く伝わる「生きる」('52)や「赤ひげ」('65)が、名作なのにどこか古臭く感じられるのに対し、この映画は今の時代にも十分通用する新鮮さを持ち続けている。それはなぜだろう。 この映画は芥川の「藪の中」をメインに、その前後を同じく芥川の「羅生門」で挟みつくられている。(だから話の中身から言えば「藪の中」だ。だが、それだけでは映画として短かすぎるのでそうしたと黒澤は後に語っているが、結果的にはより謎が深まり、パースペクティブになった) 登場人物はわずか8人で、そのうちの3人(死んだ侍、その妻、盗賊)の言うことがすべて食い違い、おまけにその様子を見ていたという杣(そま)売りの言葉も違っているという、一種の不条理劇で、結論が一つではなく多面的な解釈を許す所がそれまでのどの映画とも違い独創的だ。なおかつこの種の映画でこれを超える映画はその後も無いので、未だ新鮮この上ない。(アラン・レネの「去年マリエンバートで」('61)はこの映画に触発され生まれたが、シュールではあるが面白さの点では「羅生門」の方が上だ) 俳優は(この頃の映画に多い、少し早口で棒読み的な部分も多少はあるが)皆健闘している。中でも侍役の森雅之の格調、その正反対の野卑な盗賊役の三船敏郎の荒々しくダイナミックな演技は映画を十分面白くしているが、それ以上に凄いのが妖艶で変幻自在な京マチ子の演技だ。彼女の体当たりの演技がなければこの映画の主題である人間存在の不可解さとエゴイズムをここまで深く描けなかったろうし、黒澤映画には珍しいエロスも感じることはなかったろう。 黒澤はジョン・フォードを敬愛し、「駅馬車」('39)が大好きだったので、同じように血湧き肉躍る映画が多い。また、「怒りの葡萄」('40)や「わが谷は緑なりき」('41)などの影響でヒューマニズムの強い映画も多い。 50年代、60年代の映画は皆白黒だが、どれもが傑作だ。 だが、カラーで撮り始めた「どですかでん」('70)辺りから構成力が衰え始め、「影武者」('80)「乱」('85)はまるでロココを観ているような、美しいのだが美学だけで撮ってるような、そんな気がした。 「羅生門」は51年にヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞に選ばれ、そこから世界のクロサワが始まった。今の私達には想像がつかないが、敗戦後の打ちひしがれた日本に湯川秀樹のノーベル賞と共に最初に元気を与える出来事だった。 (それを抜きにしても、)「羅生門」は未だに日本が世界に誇る独創的でとてもモダンな映画だと思う。 かずま ![]()
by odyssey-of-iska2
| 2015-06-30 19:53
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