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2015年 11月 05日
![]() マニラのクライアントのMさんは映画が大好きだ。 東京で晩飯を一緒に食べて夜12時頃別れる時に突然、「これから六本木のヴァージンシネマズに映画を観に行こう」と誘われたことがある。私は翌朝9時から打ち合せがあるので丁重にお断りしたが、Mさんはそのままタクシーに乗って六本木に消えてしまった。 同じようなことはマニラでも何度か経験した。その時は当然一緒に観に行く。 先日マニラに行った時も、みんなでライブスポットでポップスを聴きながら遅い晩飯を食べていたら、突然、映画を観に行こうと言われ、Mさんの家族と共にシャングリラ・プラザで「The Martian」('15)を観た。 マット・デイモン主演の、火星に行って探査中に大砂塵に見舞われ死んだと思われた宇宙飛行士が懸命な努力の末に奇跡的に地球に生還するという話で、監督はリドリー・スコットだからおもしろくないはずはないのだが、丁度その時私は睡眠不足で、おまけに台詞が英語なので、懸命に頑張ろうとするのだが、ほとんど寝てるのか起きてるのかわからないような状態だった。途中でそれに気づいたMさんが、これはこういう話だと何度もやさしく英語で解説してくれたが、「I see」を繰り返すだけで、半分くらいしか理解できないまま映画は終わってしまった。 そして帰りの車の中でなぜだか「2001年宇宙の旅」('68)を初めて観た時のことを思い出していた。 この映画も実に"眠い"映画だ。 初めて観たのは完成から10年後の78年で、学校の課題を出すため前日徹夜したか、もしくは夜遅くまで飲んでたかで、寝不足のまま観に行ったらもろに寝てしまった。始めの類人猿が骨を放り上げ、それが宇宙船に変わるシーンまでは何とか我慢できたが、ヨハン・シュトラウスの「美しく青きドナウ」が始まるともうダメで、気がついたら最後の白い部屋に黒いモノリスがそそり立つシーンだった。何がなんだかわからないまま映画は終わってしまい、しかも全席入れ替えでそのまま外へ出され、謎のまま時が過ぎた。 全容がわかるのはそれから23年後の2001年の上映で、(その時は前日きちんと寝て観に行ったので)初めてこの映画の凄さを味わった。 この映画はいろんな意味で独創的だ。 先に"眠い"と言ったが、このゆったりしたテンポは独特だ、というか、異常だ。他の映画では感じることのできない代物で、宇宙の無重力空間から来ている、というよりキューブリックが恣意的に企んだとしか思えないスローテンポだ。 おまけに台詞が少なく、説明も最小限で、しかも最後の方は映像詩のようなヴィジュアルが(今度はアップテンポで)ラッシュフィルムのように続き、白い部屋のシーンで一息ついた後リヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」をバックに地球と胎児(のような)生物がアップされ終わるのだから、何なのこれ?と誰しもが思うのは当然だ。 最初の類人猿やモノリスのシーンも含め、キューブリックには観客に内容や意味を論理的にわからせようという意図はこれっぽっちもなく、俺の哲学や感じたものをただ感覚的にわかれ!と言ってるかのようだ。 そしてそれは半ば成功している。 この映画は三部で構成され、それはきちんと字幕でも示される。 The Dawn of Men(人類の夜明け) Jupiter Mission (木星探査の任務) Jupiter and Beyond the Infinite(木星、そして無限の宇宙の彼方へ) 最初と最後に比べ、真ん中の宇宙での出来事や事件は具体的で、この部分は観れば誰でもわかる。そして、その宇宙船内外のヴィジュアルやディテールの凄さに誰もがくぎ付けになる。 (この映画は1968年に公開された。人類が初めて月に降り立つ1年前だ! 想像が遥かに現実を超えている。しかもイカしてる!) わかる部分を真ん中に、わかりにくい部分を前後にサンドイッチすることで、この映画は難解で、それでいながら魅力的で、何度でも反芻して観たくなる不思議な魔力を手に入れた。(私はその後も2回DVDを借りて観た) この映画を観て、哲学的にどうだとか、わかる、わからないをグダグダ述べることにさしたる意味はないように思う。それより、時空を超えたスケールの大きさとヴィジュアルの凄さを、子供のようにワクワクドキドキしながら観た方がよい。この映画自体が解読不明のモノリスで、2時間20分のSpace Odyssey(空間体験の旅)なのだから。 こうした好奇心のビッグバンから「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」「エイリアン」「ターミネーター」「猿の惑星」「コヤニスカッツィ」は生まれた。(もちろん「The Martian」もその一つだ) キューブリックの独創性と天才を示した、母なる母胎のように偉大な映画だ。 かずま
by odyssey-of-iska2
| 2015-11-05 23:31
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