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2015年 12月 10日
![]() だから彼の映画をすべて知っているわけではなく、それをきちんと語ることはできない。しかし、そのうちの1作はとても好きで5回くらい観た。だからその映画について語ることはできる。 つまり、「ベニスに死す」について語ることはできる。 初めてヴィスコンティの映画を観たのは大学に入って間もない頃で、ある名画座でやっていたヴィスコンティ作品の連続上映だった。そこでドイツ三部作と呼ばれる「地獄に堕ちた勇者ども」('69)「ベニスに死す」('71)「ルートヴィヒ」('72)を観た。 このうち「ベニスに死す」は飛び抜けて好きな作品だった。それは今まで味わったことのない白い美意識でできていた。 映画は薄もやの中を蒸気船に乗って主人公のアッシェンバッハ(作曲家で指揮者のグスタフ・マーラーがモデル)がヴェニス(ヴェネツィア)に療養にやってくる所から始まる。(当時はアドリア海を船で渡ってヴェネツィアにアプローチできたのだ。それは何と素敵なことだろう!) 乗ったゴンドラは彼の意とは逆にサンマルコ広場ではなく直接ホテルのあるリド島に向かう。旅情を削がれ、怒りに心が震えるアッシェンバッハ。だが、ホテルで美少年のタジオに出会うと、彼の心は変わり、タジオに強く惹かれて行く。(この辺りのヨーロッパの貴族文化に流れているホモセクシャルな少年愛嗜好やロリータ・コンプレックスは私には無いので、少し引いてしまうが、タジオ役のビョルン・アンドレセンは確かにギリシャ彫刻のように美しいので、単純に美への憧れとして捉えれば納得はできる) 映画はこのアッシェンバッハのタジオへの憧れを縦糸に、彼の友人であるアルフレッド(作曲家のシェーンベルクがモデル)との芸術論争を横糸に、美への憧れと格闘の綴れ織を丁寧に織り進めて行く。(途中で出てくるタジオの母親役のシルヴァーナ・マンガーノの白い衣装やヴェネツィアの白い街並みがとても効果的で美しい) 最後に主人公は疫病のコレラにかかり、海辺で逆光に輝くタジオの姿を見ながら、(それを手に入れようと空中に手を差し伸べながら、)死んでいく。 この映画は美を愛しながら滅びて行く、もしくは永遠の美を求めて昇華して行く、極めて耽美的な映画で、貴族の出身で幼い頃からそうした環境にどっぷり浸ってきたヴィスコンティだから撮れた映画だ。 彼一流の細部へのこだわりも徹底していて、厚みと奥行き、重さがあり、ヴェネツィアを舞台に撮られた映画の中で一番ヴェネツィアを感じる。 カーニバルの夜のシーンや黒い燕尾服など黒は度々出てきて、重厚な香りを放っている。 なのに、何回観ても、最後に残るのは白い美意識だ。 これは滅びの美学と共にヴィスコンティが本能的に持っている究極の美意識で、それは後半になればなるほど加速して行く。 全編を覆うマーラーの交響曲第五番「アダージェット」もそれをさらに盛り上げる。 たぶん、これ程白い美意識を感じさせる映画はこれからも出て来ないだろう。 トーマス・マンの原作はまだ読んでいない いつか読みたい できたら死の淵で 西に沈む夕日を見ながら かずま
by odyssey-of-iska2
| 2015-12-10 17:01
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