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2016年 01月 31日
年越しは東京でした。 年末にMが肺炎をおこし入院したので、病院と自宅との間を往復してたら年が明けてしまった。少しも正月気分がしないので「幕末太陽傳」を借りて観た。 この映画は前から観たかった映画だ。その理由は「居残り佐平次」「品川心中」「三枚起請」「お見立て」など多くの落語を元に脚本が書かれ、落語好きのKさんからおもしろいと言われていたからだ。しかもデジタル修復されて画面が綺麗で観やすい。 私は正月の御節番組は嫌いなので、結局これを3回観た。3回ともおもしろかった。 まず、配役がとても豪華だ。デビュー仕立てでいきなりスターとなった石原裕次郎を始め、小林旭、二谷英明らが幕末の志士役で、ライバルの二人の花魁は左幸子と南田洋子、脇は小沢昭一、殿山泰司、金子信雄、山岡久乃、菅井きんらが固め、主人公の佐平次役はフランキー堺という、今から考えるとこれ以上はない豪華キャストだ。 特にフランキー堺の佐平次はいい。軽妙洒脱で、粋で、テンポがよく、おかげで話がどんどん進んでいく。同様に金造役の小沢昭一も秀抜で、「品川心中」の話とその後日談は多いに笑えた。 その中にあって高杉晋作役の裕次郎だけは浮いている。だが、それも軽いジョークと思えば許せるし、彼がいなければ「幕末太陽傳」などという派手なタイトルにならなかったろう。 いや、もしかしたら、裕次郎を用いたことやその浮いた演技も監督の川島雄三の計算であり作戦だったのかもしれない。 この映画はどこかモダンだ。簡単に言えば、日本風の湿りが少なく乾いてて、遊んでいる。例えば、冒頭の幕末の品川宿のシーンの直後に現代の品川のシーン(と言っても1950年代の赤線廃止直前の映像だが、)が映り、再び幕末の品川宿に戻る。 聞けば、ラストの「お見立て」の墓場シーンも、佐平治が「地獄も極楽もあるもんけぇ!俺はまだまだ生きるんでぇ!」と言って墓場から海辺の道をひた走り消えるのではなく、監督の構想ではそのまま墓場のセットを通り抜け、ドアを開けて外に飛び出し、現代まで走り抜け、それを現代人になった登場人物達が見つめるというものだったらしい。(結局、あまりに斬新過ぎたため、自分以外のスタッフや俳優達の反対にあい、断念した) こうした破天荒な遊び心はどうして生まれたのだろう。
川島雄三は1918年に青森県で生まれ、明治大学卒業後、松竹大船撮影所の助監督になり、44年の「還って来た男」(原作は織田作之助)で監督デビューする。そして「幕末太陽傳」('57)を撮ってから6年後の「イチかバチか」(原作は城山三郎)公開直前に急死する。 彼の生前の写真を見ると皆痩せている。松竹に入った頃からALS(筋萎縮性側索硬化症)だったらしい。 こうした未来に不安を抱きながら生きる人間にとって、捨てばちな心と、それとは逆の「今がすべて」と感じその一瞬一瞬に自分の人生を賭けて生きようとする心の、相反する2つが共存していたのではないだろうか。 (彼の他の映画を観ていないので正確なことは言えないが、)そうしたアンビバレンツな心が川島雄三のどこか乾いた破天荒なモダンな感覚を生み出しているように思えてならない。 創造の世界で一番大切なのは、捨てばちなくらいの勇気と刹那の中に生きる覚悟だ。 この映画にはそれを感じる。 かずま
by odyssey-of-iska2
| 2016-01-31 11:39
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