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2016年 04月 30日
大学時代、アメリカのニューシネマをたくさん観た。 そして、それがフランスのヌーベルヴァーグから影響を受けていることを知り、ゴダールやトリュフォーも観るようになった。 ゴダールは「気狂いピエロ」('65)を筆頭に、ラフで荒削りだがスピード感に溢れ、瞬発力と新しい発想で、それまでとは明らかに違う映画だと感じた。 だが、トリュフォーは映画愛好家がそのまま映画監督になったような、ある意味、古典的な映画の部分を引きずり、その分革新性に欠け、惹かれなかった。(それでも7、8本観た) 結局、「隣の女」('81)を観て、観るのをやめた。 だから「アメリカの夜」('73)を最近観るまでは、私の評価は極めて低かった。だが、この映画を観て思いはガラリと変わった。 この映画はとても実験的な映画だ。そしてそれは成功している。 舞台はカンヌの撮影所で、「パメラを紹介します」という映画を撮っているという設定で幕は始まる。そしてそれが紆余曲折の末に完成し、皆が別れるまでの顛末を描いている。いわば、楽屋裏の話やネタをそのまま見せているような趣向だが、どこからが演技でどこからが本当かわからないような虚実皮膜な所が多々あり、それが見所でもある。 トリュフォーも(フェランという名前だが)監督役で出ている。 そして役を演じているのだが、多くの本音も吐露している。 例えば、映画作りが佳境に入ってきて言う独白。 半分ほど終わった。 希望にあふれ撮影を始めるが難問が続出。 やがて何とか完成をとだけ願う。 これではいかん。 もっとやれる。 頑張れ。 まだ何とかできる。 全力で作品を生き返らせようとする。 “パメラ”も何とかなりそうだ。 皆が役に入り込み、スタッフの腰も据わる。 映画こそ王様。 後半で女に逃げられ役を降りるとゴネる主演俳優にはこう言う。 映画は私生活と違ってよどみなく進む。 言ってみれば夜の急行だ。 君や私のような者には幸福は仕事にしかない。 ものづくりの本音がここにはある。 ベテラン女優が自分のパートが終わって別れる時に、皆で記念写真を撮りながら言うセリフも印象深い。 面白い生活ね。 皆が一つ所に集まって仕事。 愛し合い、 やっと慣れた頃 とたんに皆が消え去る。 映画にはたくさんの俳優が出て来るので、誰が主人公か言うのは難しい。だが、印象的なのはパメラ役のジャクリーン・ビセットだ。彼女の登場で撮影の場は一段と華やかになり、その退場で終息し、やがて映画は終わる。 (ジャクリーン・ビセットの憂いを秘めた瞳はいつも魅力的だが、この映画では時々ボッティチェッリの名画を観ているような気分になる。また、彼女に演技を手ほどきする時のトリュフォーの手は、繊細でやさしい) 映画を観ていて、ふと、ある映画を思い出した。 ロバート・アルトマンの「ナッシュビル」だ。 アルトマンの名作はさらに混沌としていてジャジーだが、多くの人物が入れ代わり立ち代わり出てきて消えていくというアイデアは、案外この映画がヒントになっているのかもしれない。 また、映画の後半の監督の夢のシーンで、映画館に貼ってある写真を盗む幼い頃の話(トリュフォーの実話らしい)が出てくるが、ここから「ニューシネマパラダイス」が生まれたと想像するのは楽しい。 「アメリカの夜」という題名はフィルターをかけて夜のシーンを昼間に撮る映画の技法から来ている。フランス語の原題は「La Nuit américaine」、英題は「Day for Night」だが、日本での公開時は「映画に愛をこめて アメリカの夜」だった。 原題にはない頭の一言が加えられたのは(映画の宣伝効果をねらったのかもしれないが)この映画を観た配給元の率直な感想だったのかもしれない。 それほど、この映画には映画づくりに打ち込む人々の愛、そしてトリュフォーの映画への愛が感じられる。 初期の「あこがれ 」('58)「大人は判ってくれない」('59)「突然炎のごとく」('61)もいいが、それ以上に、成熟しても実験精神を失わないトリュフォーのこの映画が私は好きだ。 かずま
by odyssey-of-iska2
| 2016-04-30 00:13
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