お気に入りブログ
検索
以前の記事
2023年 08月 2022年 11月 2022年 06月 2021年 10月 2021年 01月 2020年 08月 2020年 05月 2020年 03月 2019年 11月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 01月 2018年 10月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 05月 2013年 03月 2013年 01月 2012年 10月 2012年 08月 2012年 06月 2012年 02月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 08月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 03月 2011年 02月 2010年 12月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 05月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 09月 2009年 06月 2009年 03月 2009年 02月 その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2016年 05月 21日
人の美意識はどのようにして生まれ育つのだろう。 私の場合、生まれた長崎の影響は大きい。また、家族の影響も大きい。時代の影響も大きい。出会った人、本から受けた影響も大きい。 その人本来の、というよりは、環境などの後天的要素が大きく影響して人の美意識はつくられるのだと思う。 だが、普段はそれをあまり意識することはない。 私がそれを初めて意識したのは、30才の時、9ヵ月間ヨーロッパを放浪した時だ。 嫌が上でも自分が日本人であることや日本人特有の美意識を保持していることを感じた。 それなら、日本の美意識が感じられる映画とは何だろう? そう思って考え始めたら、自然と「細雪」('83)に行き着いた。 この映画は大阪、船場の大商家に生まれた四人姉妹の物語で、原作は谷崎潤一郎の長編小説だが、それを昭和13年の春から冬の出来事に絞り、滅びゆく日本の美しさを描いた映画だ。 まず冒頭の、互いの名を「こいさん」(四女・妙子:古手川祐子)、「雪姉(きあん)ちゃん」(三女・雪子:吉永小百合)、「中姉(なかあん)ちゃん」(次女・幸子:佐久間良子)と呼びながら京都の嵐山のお座敷で繰り広げられる、姉妹のゆったりした音楽のような会話に聴き惚れる。この感覚は紛れもなく日本だ。 やがて遅れてきた長女(鶴子:岸恵子)も会話に加わり、それが一段落すると庭に出て花見が始まる。 このシーンは絶品で、映画のすべてが凝縮されたような映像だ。(最後に再び出てくる) 物語は雪子の縁談を縦糸に、妙子の男との騒動を横糸に進むが、そこに芦屋に住む分家の幸子と上本町に住む本家の鶴子とのさや当てや、ごりょうさん(鶴子、幸子)とその婿養子(辰雄:伊丹十三、貞之助:石坂浩二)の微妙な関係が絡み、最後は辰雄の転勤で鶴子一家が東京に出発し、貞之助の回想シーンで終わる。 だが、この映画は物語の筋を追うこと以上に、そこに流れる言葉や間合い、衣装、設い、調度品、風景を楽しみながら味わう映画だ。なぜなら、こうした世界をリアルに体験することは、私達はもうできないからだ。 この小説を谷崎潤一郎が書いてから既に70年、この映画が公開されてから30年以上の月日が過ぎた。その間に日本は戦争で破壊された。このように豪奢で耽美な日本は既にないし、このような映画に今後出会うこともないだろう。 私達はお手軽に京都や奈良に行き、日本を知った気分になる。だが、それは外国人が日本に憧れやってきて、日本を知った気分になるのと本当は大差ない。 日常生活のすべてから日本らしいディテールがなくなって久しい。 そしてそうしたことに危機感すら抱かなくなった。 たぶん、谷崎潤一郎は軍部の台頭に抗してこうした日本の最後の美を書き残したのだろうし、市川崑もこれが最後というタイミングで映画に残したのだろう。 小津の映画にも言えることだが、日本人特有の美意識は、こうした映画や小説の中にしか今は残されていない。 和モダンなどとチンケな流行り言葉で知ったかぶりして日本を消費されたくない。 和は元々モダンなのだ。
もっと本気で日本を愛し、日本人特有の美意識を取り戻したい。 かずま
by odyssey-of-iska2
| 2016-05-21 19:28
|
ファン申請 |
||