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2016年 07月 20日
![]() その映画を好きか嫌いかはその人の人生経験や記憶が大きく作用している。 そう考えるようになったのは、大学院時代、研究室で私の映画の師匠のAとヌーヴェルヴァーグについて話をしていた時、彼が「トリュフォーの思春期」('76)は全然おもしろくなかったと言ったからだ。 実は私にとってトリュフォーのこの映画はツーンと来る映画だった。 特に、ジプシーの身なりをした少年が転校生でやってきてみんなとわんぱくをするが、ある日の身体検査で彼の身体に無数の傷跡が見つかり、家での虐待が明るみになるシーンでは深い胸騒ぎがした。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 私は幼い頃、長崎でジプシーの兄妹と遊んだことがある。 昭和34、5年の、まだ原爆の傷跡が残っていた頃だ。(正確には近所の大人達が「あれはジプシーだ」と言ったからそう思ってるだけで、本当かどうかはわからない) ある日、私が住んでた町の山裾に掘っ建て小屋ができ、そこにある一家が住み着いた。 見たら、私とほぼ同じ年頃の、背格好も同じくらいの兄妹が遊んでいる。何の危惧も感じず一緒に遊んだ。 ある日、家に招かれ、ムシロでできた扉を開けてびっくりした。床が土のままで、所々に材木片が敷き詰められ、寝られるようにはなっているが、子供心に、この人達は大変な暮しをしているのだと思った。 すぐに家に帰って台所にあった大きな砂糖壷を抱えて再び戻り、新聞紙の上にぶちまけ、さあ、これを食べてと言って、壷だけ持って家に帰った。(なぜそんなことをしたのか、理由はわからない) 戻ってきた母親が壷の中を見てびっくりし、これを全部舐めたのか!と猛烈に叱られたが、黙ってしらをきり通した。(おかげで晩ご飯抜きにされた) だが、ある日、台風がやって来て、それが去った後、忽然と掘っ建て小屋は消え、家族も消え、兄妹の消息はわからなくなった。(大人達は隣町へ移ったらしいと言ってた) とてもショックだった。未だにその記憶は忘れられない。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ だから初めて「泥の河」を観た時もツーンと来た。 最後の、主人公の少年が「きっちゃん」「きっちゃん」と郭舟を追いかけるシーンでは涙が止まらなかった。 だが、今の人が観てもそういう反応はしないだろう。時代が違うし、感性も違う。 平和だな、と思う反面、何かが失われてしまったと思わずにはいられない。 この映画には人情がある。 それを最も良く表しているのは、川べりでうどん屋を営む主人公の少年の両親で、田村高廣と藤田弓子が実にいい味を出しながら演じている。だから哀しい内容の話にも関わらずペーソスと温かさが常に底に流れている。 最後に少年はきっちゃんの残酷な遊びを止めようとして、この一家の秘密を見てしまう。 この瞬間の加賀まりこの表情は忘れられない。 生きて行くことの辛さと哀しさを少年は初めて知る。 そしてあのラストシーンだ。 原作の宮本輝の小説はこれがデビュー作とは思えない完璧な作品で、映画はこの小説をほぼ踏襲している。 もうじき71回目の終戦記念日がやってくる。 戦争の爪痕を残すこの深い小説の一読を薦める。 と同時に、この映画が一般DVD化され、多くの人の目に触れることを願う。 かずま ![]()
by odyssey-of-iska2
| 2016-07-20 17:29
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