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2017年 05月 30日
映画を意識して観るようになったのは、高2の時に「卒業」('67)のリバイバルを観てからだ。 その後、監督のマイク・ニコルズの作品は片っぱしから観た。(私は好きになった映画の監督作品はそうする癖がある) 主演のダスティン・ホフマンはオーディションでは上手く行かなかったそうだが、それを見た監督が「彼にはSomethingがある」と言って起用したのは有名な話だ。つまり、現在ダスティン・ホフマンがあるのは、マイク・ニコルズに見る目があったからだが、おかげで私たちも、その後の彼の驚異的な演技の数々を多くの映画で観ることができる。 この映画のラッツォもその一つで、その前の「卒業」のベン・ブラドックとは全然違っていたので、初めて観た時には驚いた。 と言っても、ラッツォが出てくるのは、映画が始まってしばらくしてからだ。 それまでは、もう一人の主役ジョー(ジョン・ヴォイト)が、テキサスの田舎町からニューヨークで一旗揚げようと、マッチョなカウボーイ姿で颯爽と現れ、(バックに流れるニルソンの「うわさの男」が快調だ)金儲けのため金持ち風の女と寝るが、逆に女から金を巻き上げられ、散々なスタートを切るエピソードが続く。 そこに薄汚い格好をした(仲間からネズ公と呼ばれ、嫌われている)ラッツォ(ダスティン・ホフマン)が現れ、彼の口車に乗せられて10ドル払いある男と会うが、これが偏執狂の恐いホモで、這々の体で逃げ帰るという、さらに酷いエピソードが続く。 このラッツォの出で立ちと動作が凄い。 チビでびっこで黒づくめの脂ぎった長髪で、神経質でどもりながら早口でスラングを話し、咳をし、汗をかいて、真に都会に棲むドブネズミそのものなのだ。 前作の「卒業」で悩めるハイソな若者を演じた同じ俳優とは思えない落差で、始めは面食らったが、そのうち(凄い役者根性だな!)と、その演技にのめり込んで行った。 ジョーはカンカンになって怒り、ラッツォを探し出すが、既に金は使われている。宿無しのため、ラッツォが住処としている廃屋のビルの一室にジョーも住む羽目になる。都会の底辺で吹き溜まりのような生活を続けながら、やがて二人は心を通わせる。 その後もラッツォの咳や病いは悪化し、とうとうエンドの状態にまでなる。 最後に二人はラッツォの夢だったフロリダ行きを決め、長距離バスに乗る。 このラストシーンが何とも言えない。 朝、ジョーが目覚めるとラッツォが「小便を漏らして、身体がビショビショだ」と泣く。かわいそうに思ったジョーはフロリダ近くの休憩所で二人分の明るい衣服を買い、自分も着替えて、カウボーイの衣服とブーツをゴミ箱に捨てる。 バスに戻ると、アロハシャツにラッツォを着替えさせ、額の汗を拭く。 「サンキュー、ジョー」と答えるラッツォ。 ジョーはタバコを一服しながら、マイアミに着いたらまともな職について働くよ、どう思う?と話す。だが、返事はない。ラッツォは既に息絶えていたのだ。 茫然とするジョーとキリストのように眠るラッツォをバックに、マイアミの抜けるような青空とヤシの木、白い建物がイリュージョンのように窓ガラスに映り、それにトゥーツ・シールマンスのハーモニカがかぶさりながら映画はゆっくり終わる。 ニューシネマの中でも忘れられないラストシーンの一つだ。 観終わって二人の主役のどちらが記憶に残るかというと、断然、ラッツォ(ダスティン・ホフマン)だ。「レインマン」('88)でもトム・クルーズを食っている。 「マラソンマン」('76)でローレンス・オリヴィエ、「パピヨン」('73)でスティーブ・マックイーンと互角の演技だった。 「レニー・ブルース」('74)、「クレイマー、クレイマー」('79)、「トッツィー」('82)・・・と印象に残る演技を挙げていったらきりが無い。 本当に名優だなと思う。 かずま
by odyssey-of-iska2
| 2017-05-30 20:14
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