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2019年 05月 21日
よかった。 観終わった後もずっとこの映画の事や、ビルの事を酒を飲みながら話した。 この映画「ビル・エヴァンス タイム・リメンバード」は、実は4年ほど前に完成した映画で、既にDVDも発売されているらしい(が、私は知らなかった) 映画館では初公開で、ビルの生誕90周年を記念してらしいが、なぜこれまで未公開だったのか不思議なくらい出来はいい。少なくともジャズファンなら、80分間満足して観ていられる。なぜなら、全編、ビルのピアノ演奏が流れっ放しだからだ。(パンフレットを読むと、その数55曲) 映画も良いが、ビルのピアノのエッセンスを感じるのにもよく、改めてビル・エヴァンスというピアニストがジャズピアノの歴史を変えたのだということを強く感じた。 ビル以前はバド・パウエルを手本とした明瞭なタッチの速弾きが主流だが、ビル以降は彼の編み出した、和音の中をたゆとうように流れながらセンシティブに反応していく繊細なタッチのピアノが増える。(もちろん、ビルは速弾きも凄い。あの、少し痩せた「枯葉」のように) ビルがいなければ、マイルスの「Kind Blue」も、あんなにクールでイカしたアルバムにならなかっただろう。モード手法だけでなく、この当時のビルとマイルスは同じアイデアを同じテイストで共有していた。 また、ビルがいなければ、キース・ジャレットも、ブラッド・メルドーも生まれなかったろう。それほど、後世のピアニスト達に、あのピアノに沈潜したポーズと、音楽に入魂したプレイは影響を与えた。 だが、このドキュメンタリーはそれだけでは終わらない。むしろ、ビル・エヴァンスというピアニストの弱さと闇をえぐり出し、彼の人生と音楽とのアンビバレンツを描き出している。 それは簡単に言えば、薬と女だ。 ビルがジャンキーだったのはジャズファンなら周知の事実だが、これだけ多くの関係者からその事実の証言を聞くと、(少なくとも、演奏からは影響は微塵も感じられないので、)衝撃的だ。しかも、マイルスのバンドに入る前、1951年から3年間の朝鮮戦争の兵役時代から始まった習癖らしいので、根深い。 チャーリー・パーカー、ビリー・ホリデー、バド・パウエル、ソニー・クラーク、アート・ペッパー、スタン・ゲッツ、マイルス、コルトレーン・・・と、薬に関わるジャズメンの話は枚挙にいとまがないが、「ポートレイト・イン・ジャズ」等の真面目で几帳面な風貌とは裏腹に、ビルの薬漬けは相当なものだ。 最期は、薬物治療のため病院に向かう車の中で大量吐血し、翌日亡くなった。 女も凄い。長く同棲し、ビルに尽くしたエレインはエヴァンスファンなら知ってるが、その前にもペリ・カズンズ、その後も、妻となったネネット(エレインに紹介し、それが原因で、エレインは地下鉄に身を投げた。だが、2ヶ月後、ビルはネネットと盛大な結婚式を挙げる)、最後の恋人ローリー(兄ハリーが自殺し、その葬式帰りの飛行機から手紙を出した)など、赤裸々に女の話が出てくる。しかも皆一目惚れで、ご丁寧にもビルは彼女らに曲を送って口説いている。 要するに女たらしなのだ。しかも性格的にどこか壊れている。 この壊れた性格と、死ぬまで薬を断ち切れなかった弱い性格が、もしかしたらビル・エヴァンスの、どこかはかなく、耽溺した、センシティブなピアノと美しい音楽を生み出したのかもしれない。 ジャズにより、かろうじてビルは身の回りの世界との均衡を保っていたのだろう。 映画の始めの方で、ビルの奏でる「Body and Soul」が流れる。 そして、その演奏が1947年であることを示すテロップが流れる。 (音源はわからないが、大学に入って間もない頃のものだ) それは既にビル・エヴァンスとしか言いようのないピアノだった。 やっぱりビルは最初からビルだったのかもしれない。 そして最後までビルだったのだろう。 かずま
by odyssey-of-iska2
| 2019-05-21 19:28
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