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2020年 08月 15日
![]() 私はチャラい男は好きではない。 特に自分の職業を利用して女に付け込む奴やロリコンは好きではない。 だからポランスキーは嫌いだ。 だが、彼のつくった作品は嫌いではない。 特にこの映画は観終わった後もいつまでも心に残り、傑作だと思う。 ポランスキーが才能ある監督だというのは、彼のデビュー作「水の中のナイフ」(‘62)を観ればすぐにわかる。どこか「太陽がいっぱい」(’60)を思い出させるが、その画面構成(北斎や広重に似た、遠近を一つの画面に入れたシュールな構成がたくさん出てくる)や観る者を飽きさせないスリリングな展開、ヌーヴェルヴァーグ的な結末など、どこを切っても才能の雫が落ちてくる。この時、ポランスキーはまだ29歳だ。 その後、ハリウッドに呼ばれて「ローズマリーの赤ちゃん」(‘68 私はオカルトには興味がないので未見)をつくり、モテはやされるが、翌年、妻のシャロン・テートが自宅で惨殺され、憔悴してヨーロッパに戻る。だが、「チャイナタウン」(’74 ジャック・ニコルソンとフェイ・ダナウェイが共演した、とても匂いのある映画だ)で再びハリウッドにカムバックする。 だが、生来の悪癖が出て、未成年者強姦罪で捕まり、釈放後、国外へ逃亡する。そして「テス」(‘79)をつくる。この映画はトーマス・ハーディの小説を泰西名画風に映像化した映画で、ナスターシャ・キンスキーがとても美しく捉えられている。だが、彼女とも15歳頃から関係のあったことが後に暴露され、その後も似たような話がぞろぞろ出てくる。やれやれだ。 本題に戻ろう。 「戦場のピアニスト」は、ユダヤ系ポーランド人のピアニスト、シュピルマンの第二次世界大戦中の実話を元に、同じ経験をしたポランスキー(母親はアウシュヴィッツで殺され、父親もゲットーに入れられて強制労働を強いられ、本人も逃亡先のフランスでユダヤ人狩りから逃れ続けた)の体験が随所に込められている。 出だしはラジオ局のスタジオで録音するシュピルマンの静かなピアノから始まる。だが、ドイツ軍の爆撃でそれどころでなくなり、全員逃げ出す。1939年のドイツのポーランド進攻、第二次世界大戦の始まりだ。イギリスとフランスのドイツへの宣戦布告でシュピルマン家の人々は安心するが、状況はどんどん悪化し、家は奪われ、ゲットー住まいから収容所へ送られる途中で、シュピルマンだけ運良く逃がれられる。その後もレジスタンスの助けで住まいを転々と変えていくが、ドイツ軍の過酷な砲撃と探索で命からがら逃げ惑う。 この辺りのスリリングな展開はいかにもポランスキーで、観ていて息が詰まる。 また、主役のエイドリアン・ブロディが真に適役で、彼のどこかひょうきんな顔やボウボウと伸びた髪と髭、痩せ細った身体や身振りが、その過酷さと共に観る者の感情移入を誘う。 やがてシュピルマンはドイツ人将校ホーゼンフェルトに見つかる。そして、廃墟の中、彼の前でショパンのバラード第一番を弾く。このシーンはこの映画の白眉で、このシーンのために全てがあると言っても過言ではない程の忘れられないシーンだ。 一命を取りとめたシュピルマンはその後も生き残り、ピアニストとして活躍し、2000年に亡くなる。 「ロマン・ポランスキー 初めての告白」(’11)は、友人のローラン・ブーズローがポランスキーにインタビューしたドキュメンタリー映画だが、全体的にどこかぬるく、新しい発見はない。(もちろん、ロリコン等の話は少ししか出てこない) この中で、「僕の墓に映画のフィルムを入れるなら、『戦場のピアニスト』だ」と答えている。彼にとっても自分の中で一番重い部分を吐き出した映画なのだろう。(シュピルマンが廃墟の中でピクルスの缶詰を見つけ食べるシーンは、自分の実体験から来てることを身振り手振りで語っている) こうやって見ていくと、ポランスキーの映画に多く見られるスリリングな展開や逃亡シーンは、子どもの頃の恐怖体験から来ているのかもしれない。 そして、異常で自暴自棄なくらいの幼児体験をした人間だからこそ、刹那的な生き方や、子どもや女に対する異常な性癖があるのかもしれない。 8.15は日本で起きたことばかりが語られるが、たまには世界で起きたことに思いを馳せるのも良いだろう。 世界はつながっている。 そして、歴史は繰り返される。愚かなことに・・・ かずま
by odyssey-of-iska2
| 2020-08-15 18:12
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