お気に入りブログ
検索
以前の記事
2023年 08月 2022年 11月 2022年 06月 2021年 10月 2021年 01月 2020年 08月 2020年 05月 2020年 03月 2019年 11月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 01月 2018年 10月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 05月 2013年 03月 2013年 01月 2012年 10月 2012年 08月 2012年 06月 2012年 02月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 08月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 03月 2011年 02月 2010年 12月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 05月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 09月 2009年 06月 2009年 03月 2009年 02月 その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2022年 06月 20日
ロシアがウクライナに侵攻して以来、毎日、ニュースを見てしまう。 そして、ウクライナの都市が理不尽に攻撃されている様を見ると、胸が痛くなる。 こうしたバカなことは、天変地異でも何でも良いから、早く終わらせてくれて、ウクライナの人々に平穏な生活が戻ることを切に祈る。 (こうしたバカなことを企んだ者には天罰が下されるとよい。もちろん、ロシア人にではない。彼らを恐怖政治や言論統制で支配している為政者にだ。) この愚かな侵攻が始まって以来、気になっていた映画を三十数年ぶりに観た。 ロッセリーニの「無防備都市」('45)だ。 以前観たのは、ゴダールやトリュフォーらヌーヴェルヴァーグの監督たちが、一番影響を受けたのはロッセリーニだと言ったからだが、今回はもちろん、ウクライナの悲惨な状況がダブって思えたからだ。おかげで、当時は関心がなかった「戦火のかなた」('46)や「ドイツ零年」('48)まで観てしまった。 これらの映画は確かにそれまでのヨーロッパやハリウッドの映画とは違う。 戦時下や戦後間近でフィルムや機材、現像液が満足に手に入らなかったせいか、露光は不安定で、アレ・ブレ・ボケが随所に目立つ。だが、そんなこと以上に、戦時下、戦後の生活や人間の尊厳の核心に迫ろうとする力が圧倒的で、ぐいぐい引き込まれる。特に「無防備都市」は傑作だ。 この映画は容赦がない。 ムッソリーニ失脚後のイタリアはナチスドイツに占領され、首都ローマではそれに反対するレジスタンス運動が盛んだったが、レジスタンスに参加した人やそれを応援する人々がこの映画では次々と死んでいく。 ヒロインと思われたピノ(アンナ・マニャーニ)は結婚式の日、ナチに連れ去られる恋人のフランチェスコを追って、呆気なく射殺される。 そのフランチェスコにかくまわれていたレジスタンスの指導者マンフレーディも通報でゲシュタポに捕まり、凄惨な拷問の末に息絶える。(このシーンは今観ても過激で、R指定ものだが、どこかキリストのイメージとダブルのは私だけだろうか) 最後はレジスタンスを陰で応援したピエトロ神父が銃殺されるシーンで終わる。 だが、この映画には愛がある。 それはピノと息子マルチェロの日常の何気ない会話であったり、ピノ亡き後にマルチェロがフランチェスコに「パパ、持ってって、ママのだ」とマフラーを渡すシーンであったり、子供たちとピエトロ神父がサッカーに楽しく興じるシーンであったり、神父が店で待たされる間にキリストと裸婦像を恥ずかしそうに反対側に向ける微笑ましいシーンであったり、神父が銃殺される時に銃殺隊は銃身を下げて神父ではなく地面を撃って砂煙が上がるシーンであったり・・・ この映画の中で一番心に残る言葉は、 ゲシュタポのクラブで酔ったドイツ軍将校が言う次の言葉だ。 「俺たちは殺して殺して殺しまくった、ヨーロッパ中でだ。 この戦争は必然的に憎悪を産む。 俺たちが憎悪の的になる。 憎悪に囲まれて希望はない。 俺たちは絶望の中で死ぬんだ。絶望だ」 戦争の本質を語っている。 戦争に勝者は無いのだ。 敗戦後のベルリンで貧困の中、健気に生きる少年が、病気の父親を毒殺し、彷徨の末に廃墟のビルから飛び降りる姿に愕然とした。 ロッセリーニは映画で観る者の心を深く切り裂いた。 かずま
by odyssey-of-iska2
| 2022-06-20 19:53
|
ファン申請 |
||