(C) 大島渚プロダクション
不思議な映画だ。
その思いは、今から40年前にこの映画を初めて観た時以来変わらない。
戦争映画なのに、戦争シーンが一つも出てこない。そして登場人物は皆、男だ。
似たような戦争を扱ったもので女が出てこない映画に「アラビアのロレンス」がある。だが、あの映画には有名なアカバの戦闘シーンがあり、砂漠のせいか明るい印象がある。一方、この映画は1942年のジャワ島の日本軍俘虜収容所が舞台で、もちろん物語の展開はそれなりにあるのだが、どこか静かで、夜のシーンが多く、深い黒の印象がある。
極め付けは監督の大島渚だ。大島渚といえば、どこかセンセーショナルで政治的、社会的作品が多いが、この映画はそれらとは一線を画し、どこか内省的で、敵味方に分かれ、人種や習慣、立場の違いはあっても、通じあう普遍的な人間の内面に焦点が当てられている。
(つづく)
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