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2009年 02月 14日
この映画を最初に観たのは中学生の頃で、たぶん日比谷の「みゆき座」だったと思う。 サイモンとガーファンクルの映画の主題歌がヒットし、冒頭にその曲が流れるとどこからともなく小さな歌声が聞こえ、それが次第に複数になっていったのを覚えている。映画の細部はよくは覚えていないが、見終わった後に痛快だったことだけは記憶している。 つまり、その当時はそれほど深く映画を観ていたわけではなく、主人公と一喜一憂しながら、感情のまま映画を「なぞって」観ていた。 それが、高校2年の時にリバイバルされたのを再度観て、いろんな発見をし、それ以来それまでとは違った見方で映画を観るようになった。 最初に気づいたのは、主人公のベンと彼を誘惑するミセス・ロビンソンの密会シーンで、裸のミセス・ロビンソンがドアから入ってくる瞬間と驚いてベンが振り返る瞬間が、交互に何度も、まるでフィルムミスのように映し出されるシーンだ。 次に気づいたのは、ベンとヒロインのエレンがアパートで言い争い、怒った管理人から「出て行け」と言われたベンが慌てて階段を駆け下りるシーンで、その様のすべてが上から下まで、カメラで舐めるように捉えられている。 ベンがエレンを教会まで車で追いかけ、途中から自分で走り出すシーンでは、正面からロングで撮っているので、歩道と車道の段差が変わる度にベンの頭が上下に動き、その様が長々と映し出される。 そして教会の、有名なベンが「エレーン!」と叫ぶシーンでは、次にロビンソン夫妻と婚約者の苦々しく歯軋りする表情が無音の中で劇画のように流れ、その静寂を突き破ってエレンの「ベーン!」という叫びが続く。 つまり、一見無駄と思えるようなシーンとフィルムが至る所にちりばめられ、(音楽も含めて)全体が再構成されているので、単なるストーリーを追っただけの映画とは異なる、斬新さと知的ユーモアをたたえたクールな映画になっているのだ。 このような映画の作り方を「アメリカン・ニューシネマ」というのだ、ということはその時初めて知った。以来、ニューシネマは腐るほど観た(が、その一つ一つを話し始めたら切りがないので、ここではしない)。しかし、その後の私に一番影響を与えた映画はニューシネマだということだけは言える。 この時以来、不思議な癖が付いてしまった。映画をダブルで観ているような、つまり一人の自分はストーリーに沿って一喜一憂涙しながら感動し観ているのだが、もう一人の自分は映画の作り方を冷静かつ冷酷非情なまでに観てしまうのだ。 (実はこのことは、現在私が生業としている建築の場合でも同様で、同じようなことをいつも知らぬ間にやっている。) たぶん、ものつくりと言われる人間は皆同じようなことをしているのだが、それを最初に気づかせ、自覚させてくれたのが、この「卒業」という映画だった。 マイク・ニコルズには深く感謝している。 かずま #
by odyssey-of-iska2
| 2009-02-14 23:25
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